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成年後見人と家族信託の違いとは?安心できる財産承継を実現する。~後編~

石井 満 副代表・麹町オフィス所長・民事信託事業部部長
司法書士(兵庫第2040号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

成年後見と家族信託の違い④ ~必要な手続きの違い~

成年後見(法定後見)制度や家族信託を利用したい場合、それぞれどのような手続きが必要になるでしょうか?まず、成年後見(法定後見)制度ですが、ご本人の判断能力が既に十分でない場合に、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てることが必要です。

申立てができる人は、本人や4親等内の親族等限られています。申立て時に成年後見人に選任したい候補者をたてることになりますが、様々な事情を考慮し、希望とおりに選任されるとは限られないのが実情です。

特に最近、ご親族の方が後見人になることを希望しても選任されないケースも出ています。申立てから選任審判が確定するまで2~3ヶ月程度の時間がかかることが一般的です。

対して、家族信託ですが、裁判所の関与は無く、当事者の合意-「託す人」と、「託される人」との契約によって制度の利用が可能です。裁判所の関与なしに、当事者で自由に設計できてしまうので、家族でも特に信頼関係があり、かつ信託する目的が明確になっている必要があります。

また、金融機関等対外的にも家族信託の効力を主張していく為には、公正証書契約でなされることが理想的です。基本的に、当事者の信頼関係による契約によって成り立つ制度である為、必要に応じて、第三者の目が必要な場合には、『信託監督人』を契約で定めることもできます。

また、不動産の信託契約を行う場合は、名義と権限を受託者に移転することになりますので、これを登記簿に公示する必要があります。つまり、受託者への所有権移転、名義変更の登記が必要になります。

成年後見と家族信託の違い⑤ ~どのような費用がかかるの?~

それぞれの制度を利用したいと思ったとき、やはり、気になるのはそのコストではないでしょうか?
家庭裁判所の審判による成年後見制度を利用しようとする場合、裁判所の厳正な手続きとなるので、医師の診断書等、多数の書類を揃える必要があります。

また安心できる成年後見人候補者をたてて、スムーズな手続きを行うためには、成年後見業務に精通した専門家のサポートを受けることが理想的です。従って専門家による申立てのサポート費用、裁判所への申立て等費用実費(医師の鑑定書費用を含む。)等が審判確定までに発生する費用となります。

当事務所の場合、全て含めて申立て時に約20万円前後のお費用を案内させて頂いています。審判が確定し、成年後見人が選任された後は、その任務の報酬については家庭裁判所が毎年決定します。本人の資産総額等に応じて決定されます。

家族信託のコストはどうでしょうか?まず、上記で述べたとおり、家族信託の契約は公正証書を強くお勧めしておりますので、公証人手数料が必要です。加えて不動産の信託の場合、名義を受託者に移転することになりますので、登記費用-登録免許税が実費として発生します。

専門家への相談費用ですが、これは契約内容(信託する資産総額や家族構成等)によることが多いので一律とはなりませんが、本サイトの費用案内のとおり、最もシンプルな形の契約内容で30万円~の手数料となります。

税金について触れておくと、生前に財産を移すと本来は「贈与」となります。そうなると莫大な贈与税がかかってしまいますが、家族信託は贈与ではないので、贈与税はかかりません。贈与税をかけずに財産の名義と権限のみを受託者へ移すことができます(但し将来の相続税の対象にはなります。)。また、成年後見制度とは異なり、契約後の継続的な費用は一般的には発生致しません。

成年後見と家族信託の違い⑥ ~どのように使い分けるのですか?~

このように成年後見制度と家族信託は、どちらも認知症等の判断能力の欠如が生じた際に、本人に代わり財産管理等の対応をする制度ではありますが、その手続き、制度を利用するタイミング、及びその効果において、様々な違いがあります。

どちらの制度が優れているという類の話ではなく、どの制度を利用していくべきかは、ご本人様の状態、ご家族との関係性、保有資産の状況によって、とるべき対応は変わってくると思います。

但し、一点、注意が必要です。成年後見(法定後見)制度は既に判断能力が不十分な方の支援の為の制度ですが、家族信託は、あくまでも本人の自己決定権に基づくものであり、信託の導入時においてはご本人様に契約を有効に行えるだけの判断能力が求められます。

よく、「私の家族の場合、家族の中にしっかりと財産を管理できる後継者(自分)がいるので成年後見人までは必要ない。家族信託で親の財産を自分に移しておきたい。但し、親はもう契約をできるような状況にありません。」というような相談が後を絶ちません。

家族信託は有効な契約行為により成立します。肝心なご本人の意思を確認できない限り、いくら家族信託をしたくても、しないといけないような状況にあっても、時既に遅し。有効な対策だからこそ、お元気な時に、しっかりと将来を見据えてご家族で話し合い対策すること、これが家族信託を導入するための一番のポイントではないでしょうか。

まとめ

以上、前編、後編に渡り、成年後見(法定後見)制度と家族信託の違いについてみてきました。超高齢社会に伴う認知症患者数の増加に伴い、そういった方々の財産を誰がどのように守っていくのか、という問題は、社会的問題として提起されています。

このお話は、決して特別なお話ではなく、どのようなご家庭であっても直面する問題です。そのリスクに備えて、お元気な時だからこそ、複数の選択肢から最適な対策を行えるのではないかと思います。

いざ、身近でそういったトラブルに見舞われる前に、お元気な時に、『家族信託』、『成年後見制度』のお話をきっかけに、親子で、ご家族で、安心できる財産承継について、お話合いが行われることを、切に願っています。

トラブルを未然に防ぎ、損することなく財産承継を行いたい方は、弊社にお気軽にご相談ください。