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【注意】家族信託は相続税対策にならない?家族信託による資産活用法

石井 満 副代表・麹町オフィス所長・民事信託事業部部長
司法書士(兵庫第2040号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

家族信託は相続税対策になるのか?

今からおよそ10年前の新信託法施行により、「信託」がそれまでの信託銀行によるもの以外に、より広く柔軟に活用される道筋ができました。すなわち、信託を家族間で行いやすくなり、受益権の承継者を予め決めておいたり、次の次まで定めることができたりなど、信託の活用の幅が広がりました。

新信託法施行当初は、信託を将来の事業承継対策や相続対策にも活用できるのではと特に専門家間では期待されましたが、結局、相続税法9条の2などにより、原則的に受益者に対してみなし相続税を課すとして、財産名義ではなく、実質的な価値(受益権)の取得者に対して資産税(相続税または贈与税)を課し、例外的に受益者がいない場合、受託者に対して課税するとして、その課税の隙間が生じないように配慮されています。

みなし課税の内容として、各種相続税の軽減(貸地評価等や小規模宅地、配偶者軽減等)が適用され、信託財産に積極財産と消極財産(債務)があるときは、それぞれ財産と債務を承継したとみなされます。従いまして、家族間に信託をしても、相続税上、メリットもデメリットも生じることは無く、家族信託自体が相続税対策とはなるわけではありません。

家族信託による資産活用の方法とその妥当性(建物建築)

信託の活用上の種類として、旧法時代より「土地信託」と呼ばれるものがあります。土地の所有者が所有名義を他(かつては信託銀行・今は後継者等)に託し、託された者は、その責任を持って土地上に収益建物等を建築し、場合によっては、そのための借入や担保提供も、託された者により行います。

名義は託された者の名義であるため、それらのための契約(建築請負契約・ローン担保提供契約・その後の賃貸借契約など)は、全て託された者により行います。しかしながら、それらの経済的効果(土地の評価・建物価値・収益権利・ローン債務負担)は、受益者である元々の所有者が享受します。すなわち、受益者のために託された者が責任を持って財産を管理運営していくわけです。

そして、元々の所有者(受益者)に相続が発生した際に、結果的に建物賃貸による評価減や小規模宅地の適用、債務負担による債務控除等の税効果が生じる可能性があります。これは本来、元々の所有者が行うべき財産管理運用を本人に代わり託された者が行うことの効果です。

これは、信託をした後に、元々の所有者に認知症等の判断能力の喪失が生じた場合でも、託された者により、引き続き上記のような財産活用を実現できることを意味します。ただ、前提として、その信託の目的が、受益者のために土地活用を行うことになっており、託された者にその権限が付与されていることが必要です。

家族信託による資産活用の方法とその妥当性(生前贈与)

家族信託により、親の財産を後継者たる息子に託し、親のために息子が財産の管理や処分行為ができるのであれば、「生前贈与」も託された者により行えるのではないか、とご質問を頂くこともあります。

例えば、親が、将来にわたり孫に贈与したいと考えており、その親の意向を受けて、息子が親より金銭の信託を受けます。その後、親が認知症を発症し、判断能力を失った後も、託された息子の判断により、孫に贈与していくことが可能ではないかということです。

信託で託されるのが財産の管理処分であることから、贈与という処分も許されるようにも思えます。このように親族に贈与をしていきたいと考える人は珍しくなく、自己の判断でできなくなっても代わりに実現してもらいたいというニーズがあるのも事実です。

この点、悩ましいところかもしれません。これについては、次の2点が気になるところです。

1点目は、将来何回かに分けて贈与するために信託することが、それ自体、受益者への一括贈与とみなされないか、と言う点です。2点目は、信託は、財産管理のための法的制度であり、かつ、受益者のための制度であることがその本質となります。

その意味で、託された財産を、一方的に目減りさせていく行為(贈与)が信託の受託者として果たして許されるのか、また、そもそも、そのような目的の信託は認められるのか、という疑念もあります。ただ、信託が委託者である元の所有者の意思によるものであり、契約自由の観点が強く認められる(意思凍結機能)ことも信託の本質であり、その意味では委託者の、贈与という処分を託すこともあり得ることのようにも思えます。

あくまでも、その信託の目的、事情、当事者の関係等、総合的に判断していく必要があるものと思われます。ただし、少なくとも、「相続税対策」自体が目的である信託は、信託の目的としては厳しいものと言えます。

まとめ

以上のとおり、家族信託は、それ自体相続税対策とはなりません。また、相続税対策を信託目的とする家族信託は、その存在自体非常に怪しいものとも言えます。家族信託は、あくまでも元々の所有者(兼受益者)本人のために、本人の意図した目的の範囲内で、託された人が、責任を持って財産の管理や処分を実現していくものです。

その結果として、相続の際に評価減や各種軽減等を受けることもありますが、それはあくまでも家族信託の目的ではなく、家族信託による財産活用の効果です。信託は誰のためのものか?あくまでも「受益者」のためのものなのです。

最後に、司法書士法人おおさか法務事務所は、家族信託に関するご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。