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【専門家監修】民事信託のデメリットとは?有効活用するためには?

呉 静香 西宮オフィス所長
司法書士(兵庫第2056号)・簡裁訴訟代理等関係業務認定(第1412119号)・宅地建物取引主任者・行政書士

テレビや新聞、雑誌等様々なメディアで、たくさんのメリットが伝えられている家族信託。

メリットばかり伝えられると、本当にそうなの?

デメリットはないの?と不安に思われることはございませんでしょうか?

今回は、家族信託のデメリットの部分に焦点を当てて、詳しく解説します。

デメリットその1:初期費用がかかる。

当然といえば当然ですが、家族信託を利用する場合、コストが発生します。

初期費用の内訳は、

  1. 司法書士等の専門家への相談費用と
  2. 公正証書契約書の作成費用及び
  3. 不動産の場合であれば登記にかかる登録免許税等の実費

が考えられます。

それぞれの具体的な金額については、他のコラムで言及しましたので割愛しますが、初期費用としてまとまったお金が必要なことは確かです。

これが、家族信託の最大のデメリットかも知れません。

「もう少し、費用が安ければ前向きに考えたいのだけど・・」というご相談は、多くのお客様からお受けします。

少しでも費用を抑えるために、「専門家に相談せずに自分で契約書を作りたい」「公正証書での契約を省きたい」「家族間のことなので登記はしなくても良いのでは?」と、

とたくさんのご意見を伺いますが、やはり、家族信託を対策として意味のあるものとして利用する為には、将来を見越した設計を専門家の関与の下で行うべきです。

また、不動産の場合には登記を備えることは法律上必要ですし、契約を公正証書にしておかなければ、銀行等の関係先に認めてもらえず、対外的に使えないものとなってしまいます。

将来、いざという時に使える信託でなければ意味がありません。契約時の費用は、家族信託の対策が必要なご家族にとっては、全てが必要経費だと思います。

そうはいっても、「もう少し利用しやすくなってほしい・・。」

というお気持ちには、私達専門家も共感できますし、実際私達が依頼する立場だとしたら同じような心境になるはずです。

やはり家族信託普及への最大の障壁(デメリット)は、この費用面にあるのではないかと思います。

デメリットその2:原則的にはチェック機関がない

成年後見制度とは異なり、家族信託は裁判所への報告や専門家の監督が必要ありません。

託す人、託される人の二者間で契約をし、その契約に沿って、託された人が本人(託す人)又は指定された第三者の為に管理をしていきます。

裁判所や第三者の関与なしに、家族の財産を家族の判断で管理・運用できる点は、他の制度にない大きなメリットです。

しかし、このメリットは裏を返せば、家族信託には、原則的に裁判所や専門家等の第三者の目が入らない、チェック機関がないということになります。

この点を不安に思う方が少なくありません。

「託される人を信じて信託をしたいけれど、万が一、その人が管理をしてくれなくなったら・・・」と心配になりますよね。

成年後見制度であれば毎年の収支等を裁判所や監督人となる専門家へ報告する義務があり、後見人としてふさわしくない者は解任されてしまうこともあります。

家族信託でも、託された財産を自分の為に使ってしまうことは横領l行為になる可能性がありますが、原則的には成年後見制度のような第三者のチェックということは想定されていません。

この点が2つ目のデメリットと言えるでしょう。

なお、家族信託の場合も契約によって、信託監督人や受益者代理人を定めることにより一定のチェック機関を設けることが可能です。

実情に応じては、そのようなチェック機関を設けることが適切な場合もあるでしょう。

デメリットその3:プライベートな情報や契約内容の概要が登記簿謄本に記載される

不動産の信託を行う場合は、不動産の名義を「託される人」に変更する必要がありますが、この時、信託契約書の主な内容について、信託目録として、登記簿に記載することになります。

家族内のプライベートな情報が誰でも確認できる不動産登記簿に記載されることにつき、驚かれる方が少なくなりません。

しかし、該当不動産を管理・処分できる権限を持つ者が誰であっても、その人が何ができるのか、万が一のことがあった場合には誰が任務を引き継具のか、ということは対外的にもとても重要です。

この信託目録に、情報をどこまで載せるのかは結構難しい判断でもあります。

「託される人」の権限や権利の承継内容を対外的に明確に示すことにより、信託管理上の各種契約や手続をスムーズに進めることを重視すると、詳細に記載するべきとなりますし、

家族の内部情報、特に権利関係や承継内容についてなるべく伏せておきたいとなるとなるべく省略して記載していくべきとなります。

このバランスが実務的にも悩ましいところではありますが、いずれにしても通常の登記と異なり、詳細をオープンにする必要がある点においてデメリットとも言えるかもしれません。

このデメリットにより、家族信託をやめておきます、という方は今まで一度もございませんが、少し気になるというお声は多々ありますので、1つのデメリットとしてご紹介しておきます。

デメリットその4:信頼できる後継者がいないと導入は難しい。

デメリットその2に関連しますが、家族信託は第三者のチェックというものを想定していません。

それは、「信託」という言葉が表す通り、家族信託の根幹は、「信じて託せる家族間の信頼関係」にあるからです。

「認知症のリスクは心配だけれども、任せてもいいと思える後継者がおりません」

「もしもに備えて、自分に任せてほしいと思っているけれど、親が何を考えているかわかりません」

親子等の家族間であっても必ずしも意思の疎通ができているとは限りません。

誰かに信託をした方がいいなと思うご相談はたくさんありますが、その誰かを明確に意識できていない限り、実際に家族信託を利用することはできません。

この信頼関係の部分については私達専門家もアドバイスはさせて頂きますが、家族関係の核心に迫ることは難しい、なかなか親族外の者が関与するには限界があります。

この信頼関係の確認が家族信託導入する上での前提であり、将来に渡って有効な対策として機能させる為の基本の部分となります。

そういった信頼関係が前提になるという点で、家族信託はどなたでも利用ができる万能のものではありません。その意味で最後のデメリットと致しました。

まとめ

以上、今回は家族信託のデメリットについて、お伝えしました。

家族信託を利用するときに、こんなはずじゃなかった!!とならないように、前向きに考えられている方にこそ、デメリットについてはしっかりとご理解頂ければと思います。

決して、今回ご紹介したデメリットによって「家族信託を使えない制度」と判断してしまわないでください。

費用はかかりますが、対策が必要な方にとってはリスクに備えるため必要経費だと思います。

また、それぞれのデメリットについても、裏を返せばメリットとなる部分があり、条件の当てはまるご家族にとっては、成年後見や遺言よりもいいパフォーマンスを発揮することがあります。

あえてデメリットを深く知って頂き、それでも、、家族信託を導入したほうが良いご家族は、大勢いらっしゃいますし私達もそのお手伝いをして参りました。

いいことばかりではないですが、将来のご自分やご家族のためにも必要なことの一つとして、家族信託をご検討頂けると嬉しく思います。

ご検討中の方はぜひおおさか家族信託相談室へお気軽にお問い合わせください。