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【民事信託と家族信託の違いとは?】その違いを分かりやすく解説!

石井 満 代表社員
司法書士(京都第1278号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

同じような内容なのに、「民事信託」と言われたり「家族信託」と言われたり…。
また、「家族信託」と言っても様々なものがあったり・・・。
一体、何が違うのでしょうか。それとも同じなのでしょうか。民事信託と家族信託、その意味や実際の扱われ方について詳しく解説します。

民事信託や家族信託って、一体どんなもの?

「民事信託」とは何か?「家族信託」とは?はたまた「商事信託」とは何か?多くの法律には、用語の定義が書かれていますが、実は信託法の中にこれらの用語の定義は書かれていません。書かれているのは、「信託」とは何か、ということだけです。すなわち、「民事信託」や「家族信託」は、法律用語ではないのです。
一般的な考え方としては、信託銀行などのように、受託者が営業として引き受ける信託が商事信託で、そうでないもの、つまり非営業の信託が民事信託であるとされることが多いです。そして、非営業の民事信託の中でも「家族型の民事信託」が「家族信託」と呼ばれることが多いかもしれません。

信託銀行等が行う営利目的で不特定多数の顧客との間で反復継続して行われる信託は信託業法の規制を受けます。このような信託法と信託業法の規制を受けるものが商事信託で、非営利で信託法の規制しか受けないものが民事信託である。このような区別の仕方が、分かりやすい区別の一つとされています。

しかし、法律上そのような定義がされているわけではないので、学者によって定義づけは様々です。受託者の役割が受動的な財産の管理や処分にとどまるものが民事信託で、より積極的なものが商事信託であるとする見解や、ギフト型(贈与)の信託が民事信託で、ディール型(取引)の信託が商事信託であるとする見解など様々です。

こういった見解によれば、信託銀行等が行うものであっても、民事信託や家族信託がありうるということになってきます。
結局のところ、明確な線引きをすることは難しいところですが、信託業法の規制を受けない家族型の民事信託が、今、世間で言われている家族信託である、と言っていいのではないでしょうか。

違いがハッキリしない、家族信託と民事信託

家族型の民事信託、すなわち家族のための民事信託が「家族信託」である。
このように考えると、民事信託の一種が家族信託であるということになります。
しかし、昨今のセミナーや書籍、マスメディア等、世間にあふれる民事信託や家族信託の内容は、どれも同じ内容に見えます。
実際は、「家族信託」=「民事信託」と同じ意味で扱われていることが多いです。
「民事信託」という言葉で書かれた書籍でも、「家族型の民事信託」を「民事信託」としますと冒頭に書かれていることがあります。
このように、「家族信託」という言葉と「民事信託」という言葉は同義語として、筆者の好みで使い分けられているのが現状です。

家族信託は、家族じゃなくても関与できる?

「家族信託」という言葉は、非常に分かりやすいと思います。
高齢者や障害者の生活などを支援する信託や、相続対策として資産承継のためになされる信託など、まさに家族のために家族が関与してなされる信託をイメージするのには「家族信託」という言葉がぴったりです。
その一方で、家族以外の人は関与できないのでは?という誤解を生む言葉でもあります。
家族信託的なものであっても、受託者が家族でなければならないという制限はなく、家族以外の第三者が受託者になることもあり得ます。
分かりやすさを重視して「家族信託」と言うのか、誤解をまねかないように「民事信託」というのか、考え方は人それぞれです。
どちらの言葉が使われていても、「信頼のおける人(家族であることが多い)に行う信託」であることに変わりはありません。

まとめ

「家族のための(家族型の)民事信託」が「家族信託」とするならば、両者の関係は、「民事信託」>「家族信託」ということになります。

しかし、現在は、「民事信託」=「家族信託」という扱いがされていることがほとんどです。
本来、言葉の定義は非常に大事なことですが、「○○信託」は正式な法律用語ではありません。
用語を使用する側も様々な意味で使用しています。
ただ、今のところ、「家族信託」と「民事信託」は、同じ意味で使われていることが多いです。
「民事信託と言っているから、家族信託とは違う話だ!」とまで思う必要はない場合が多いです。