COLUMN

コラム・事例

空き家の事情

石井 満 代表社員
司法書士(京都第1278号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

数年前より空き家問題が言われております。少し注意して見ると、世の中空き家だらけです。昔から人気の閑静な住宅地でさえ、空き家がポツポツと現れています。空き家の事情は様々でしょう。ただ、概ね次の4段階に分かれているのではないでしょうか、

第1段階

子どもたちが独立し、夫婦共に暮らしてきたが、高齢により、もっと交通の便の良いところにマンションを購入しそちらへ引っ越しする方も増えています。また、施設へ入居する方もおられます。この際、自宅の売却ができればいいのですが、なかなか住み慣れた自宅を売却するのも消極的な方も多いです。子たちがいつか使うかもしれないし、まずはそのままにしておく空き家です。

第2段階

そんな状況が続く中、自宅の持ち主が、高齢や病気、認知症等により、判断能力を失ったら、その自宅はもはや本人の判断で売却できません。それどころか建替えや賃貸も難しくなります。周りの家族も本人の判断なしには何もできません。この場合、成年後見制度を利用する必要があるのですが、なかなか周りも決断できず空き家です。

第3段階

そして、自宅の持ち主がご逝去される。相続人が皆で集まり、自宅を「どうしよう、こうしよう」と話し合いがまとまればいいのですが、なかなか相続の遺産分けも難しい、話し合いがつかないと自宅土地建物は共有です。共有になると、売却等するには共有者全員の同意が必要。結局そのまま空き家です。

第4段階

また、この共有、いったん共有になるとその人数は減ることはありません。代替わりごとに、共有者は増えるばかりです。次世代、次々世代になるとあっというまに数十人が共有者なんて珍しくありません。こうなると、もはや法律を変えない限り永遠に空き家です。

少し乱暴に書きましたが、でも本当のお話です。つまり普通のライフサイクルの中で、空き家はどの家庭でも起こりえる普通のお話です。これを防ぐにはどうしたらいいか、なんとなくでは防げません。自宅等の財産を有する持ち主自身が元気な時に、将来どうしたいか考え、家族と話し、備えをしておく必要があります。「家族信託」とは、その備えとしての仕組みとなるものです。