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コラム・事例

認知症になる前に家族に資産を承継する

石井 満 代表社員
司法書士(京都第1278号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

家族信託で何が実現できるのか?一言で言うと、生前に財産を移すことができます。生前に財産を移すと本来は「贈与」となります。

「贈与」はつまり「あげてしまう」ことです。そうなると通常は贈与税がかかります。贈与する財産が不動産となると、莫大な贈与税となります。通常この贈与税がかかるため、うかつに不動産を贈与することはできません。

また、贈与してしまうと、当然ですが、贈与を受けた人のものになる以上、その人が今後は自由に処分したりできます。できたら「しばらくは売らずに大切に使って欲しい」等、そういう要望は実現できません。

以上のような理由で、生前に財産を移すことは、なかなか難しいものです。そのため、どうしても資産承継イコール相続時となってしまいます。不動産や中小企業の自社株式等大切かつ高価な財産程、生前に移しにくく、承継は相続時になってしまいます。

この高齢時代の中、資産承継が相続時というのはあまりにも遅い、資産承継・事業承継の難しさはここにあるのではないでしょうか。平均寿命と健康寿命の差は平均で10年あるとも言われているこの時代、資産承継も適切な時期に行う必要があるのではないでしょうか。

そこで「家族信託」です。まずは後継者を決めます。そしてその後継者と約束を書面化し、適切な時期に名義を移します。名義を取得した後継者は自分のためでなく、親が予め想定した範囲内でその財産をきちんと管理運用処分していきます。そして相続時にもどうするかまで決めておきます。

家族信託は生前に財産を承継する手段ですが、「贈与」ではありません。親の想いを受けてきちんと管理活用するための資産承継です。相続=承継が今までのイメージならば、言わば「生前相続」とも言えるものです。