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コラム・事例

家族信託の費用の目安

石井 満 代表社員
司法書士(京都第1278号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

家族信託の導入には、どのくらい費用がかかるのか。どんなに必要なもの、良いものでも、「コストに合うのかどうか」が導入判断の分かれ目です。家族信託は、生前に不動産の名義を移転しても、贈与ではないので「贈与税がかかりません。」「不動産取得税もかかりません。」「登記費用のうち登録免許税も贈与等の5分の1で済みます。」ただ、とはいっても、やはり費用が気になるところです。

信託を導入する際、どのくらいかかるのか?不動産の信託を例に、以下、簡単に記します。

不動産を信託により名義移転する場合

①登録免許税

土地は固定資産税評価額の1000分の3の金額
建物は固定資産税評価額の1000分の4の金額

毎年5月頃に、固定資産税の納税通知書が市町村役場より送られてきます。そこに添付されている「物件明細書」に「価格」又は「評価額」と記載されているものが「固定資産税評価額」です。この金額(物件の持分の場合には、持分相当の額)に、上記割合を乗じた金額が登録免許税です。(例えば、土地の評価額が3000万円なら9万円。建物の評価額が2000万円なら8万円。合わせて17万円ということになります。)

②公証役場における公正証書作成費用

信託契約書は、公証役場にて公正証書にして頂くことを強くお勧めいたしております。信託後の金融機関にて信託口口座を開設して頂く場合やローンの申込をして頂く場合、金融機関側の条件として信託契約が公正証書であることが条件とされているところがほとんどです。また、信託契約は遺言の代用にもなることから、公正証書にして頂くべきところとなります。この公正証書作成の際、公証役場にお支払い頂く費用が発生いたします。公証人費用は、信託財産の価格、契約書の枚数等により料金設定が定めれれていますが、例えば5000万円相当の財産で標準的な信託契約の内容である場合、約6万円~8万円ほどです。

③司法書士等専門家への手数料

①、②が信託導入時にかかる実費の全てです。これに加えて、専門家に契約書の作成や信託による名義移転登記を依頼した場合、その専門家に支払う手数料がかかることになります。専門家も様々な立場の方がご提案されているかと思われます。手数料も、不動産の評価額や契約内容により様々であろうかと思われます。大切なことは、手数料に見合ったサービス内容になってるいるかどうかですが、専門家により、かなりばらつきがあるのが現状ですので、事前にしっかりと御見積書とサービス内容の提示を依頼して頂きたいところです。ちなみに当方では、①法務局への登記申請、②前提となる信託目録作成、③信託契約書の作成、④公証人手配を担当させて頂きますが、信託の概要の説明をさせて頂いた上で、まずは事前にお見積書を提示させて頂きます。(標準例としましては、5000万円の不動産及び金銭を家族に信託する場合で、約30万円~約60万円が一般例となっております。)

以上が、信託導入時にかかるコストの全てです。それなりに、費用がかかってしまいます。ただ、将来的に、「後見制度を導入しなくても、親のために適切な売却ができた。」「建物建築による相続税対策ができた。」等、信託していたことにより、結果的に費用以上の効果が生まれるご家族もおられます。また、信託する財産以外の財産については、併用して遺言書を検討して頂く場合もあります。信託・後見制度・遺言など、将来的に何が一番いいのか(必ずしも信託をしなくてもいい方もおられます。)を、しっかりと説明を受けて頂きたいところです。また、法律・税金・登記等、信託に係る知識を網羅し、多面的なアドバイスをして頂ける専門家へのご依頼をして頂くことが大切です。