COLUMN

コラム・事例

共有不動産の売却

石井 満 代表社員
司法書士(京都第1278号)・簡易訴訟代理等関係業務認定(第112066号)・民事信託士・行政書士

「共有不動産の問題」

実は、静かな社会問題です。しかも既にかなり深刻な不動産がたくさんあります。先日も、山陰地方の市役所から全く心当たりのない土地の固定資産税の納税通知書が届いた旨の相談がありました。

通知書を見ると、その方の曾祖父、つまり、ひいおじいちゃん名義の土地があり、その土地の固定資産税が滞納になってるとのことでした。

曾祖父は、その方が生まれる前に亡くなっているそうで、当然顔も見たことがありません。役所に問い合わせると、同じ通知書を一斉に40人程の相続人全員に送付したとのことです。今回は、なぜか数日後に、役所よりお詫びの通知が来ました。(おそらく、どなたかその土地に近い方が支払いをされたのだと思います。)

とりあえず、今回はそれで終息しましたが、今後また、いつ通知が来るか分かりません。そしてこれはこの先何代に渡っても送られてくる可能性があるのです。ちなみに、納付額は相続人の数で分割されるわけでなく、各人が、全額を連帯して支払う義務があることになります。

税金だけの問題ではないかもしれません。

その土地は誰が管理しているのでしょうか?建物はないのか?荒れ果ててないのか?
不動産の管理上、発生する費用や責任はどうなるのでしょう。

どこかで誰かがなんとかしなければなりません。でもかなり難しい。。。
共有者間で連絡の取りあえる、話ができる間に何とかしたいものです。

少なくとも売却する権限を一本化しておく。

家族信託(民亊信託)の使い方として、このような共有不動産の売却準備のための使い方があります。

共有の難しい面は、いざ売却したいときに全員の足並みが揃わず機を逸してしまう。時期や値段で意見が食い違うなどして判断できないところが大きな問題です。この判断の権限を一人に集中させ、他の者は確実に売却代金を受け取る形を作りたいところです。

そこで家族信託です。

共有者が、皆お元気なうちに、代表者に持分名義を信託(持分名義移転)します。託された人は共有者全員のために不動産を管理し、タイミングを見て一人の判断で売却します。この売却等をその人のみの判断でできるところがポイントです。

そして、その人が責任をもって、売却金を各共有者に分配します。いったん一人に託した後は他の共有者の中に、認知症の症状が出たり、亡くなったりする方が出てきても問題なく売却することができます。

持分を買い集めるのは、なかなか難しい。
それなら価値(売却金を得る地位)は、それぞれの手元に残して、権限のみを任せて頂く。

家族信託の使い方の一つです。